労働者の味方の筈のワーカーズコープが組合つぶし? 名古屋NPOセンター

http://www.news.janjan.jp/living/0808/0808275639/1.php

さとうしゅういち 2008/08/29

労働者が共同出資して運営するNPO法人「ワーカーズコープ」の職員で、労組「名古屋ふれあいユニオンワーカーズコープ分会」の柴田太陽・委員長が、法人側から不当な攻撃をかけられている。柴田氏は5月、法人から解雇通告された職員を守るため、「名古屋イキナリ労組」を作り、闘いに勝って、関係者の注目を集めた。同氏たちは活動の一環として情報誌を発行しているが、法人側はクレームをつけ、反省文を提出しなければ解雇もある、と通告したのだ。働く者の味方の筈の法人が、組合つぶしに出たもので、柴田委員長支援に全力を尽くすつもりだ。

今年5月、「なごやボランティア・NPOセンター」に全国的な注目を集める労組が誕生しました。「名古屋イキナリ労組」です。その労組の柴田太陽・委員長に対して、いま、攻撃が仕掛けられています。柴田委員長や組合員に取材しました。

■「KYカット事件」後も努力した職員
事の発端は、いわゆる「KYカット事件」です。センターの管理・運営を名古屋市から委託されている「NPO法人・ワーカーズコープ」が、利用者の便宜を図るために施設の問題点を指摘したAさんに、解雇を通告した事件です。法人の管理職はAさんに対し、「市への態度が悪い」として、名古屋市職員の現場への無理解を棚上げして、一方的に解雇通告をしたのです。

参照:
『KY解雇』が発生? 名古屋市の施設の指定管理者交代のその後

この連絡を受けて、柴田太陽さんたちは直ちに労組を結成しました。そして、見事に解雇を撤回させ、法人側にもこの一件が「不当解雇」であった事実を認めさせました。

この問題で職員の先頭に立って労組を結成、不当解雇撤回闘争を指導したのが柴田委員長で、筆者も5月18日の大阪でのP8(「貧困者の末端会議」)でお会いしています。「イキナリ」の解雇に対して、即時に労組結成で対抗し、不当解雇をはね返した「名古屋イキナリ労組」の闘いは全国的な注目を集め、連合のホームページや「朝日新聞」などでも紹介されました。そして、7月には「名古屋イキナリ労組」は愛知県の個人加盟制労働組合・名古屋ふれあいユニオンに合流し、「名古屋ふれあいユニオンワーカーズコープ分会」となりました。

5月以降は、「KYカット(解雇)」事件がありながらも、センター職員は柴田委員長を先頭に、情報誌「交流感電池」を出したり、講座を主催したりして、がんばってきました。情報誌、主催講座とも好評でした。

私も「交流感電池」7月号を読ませていただきましたが、この号は「あなたのとなりにある貧困」という読み応えのある特集や『蟹工船』の書評、センターで行われている躍動感あふれる講座のレポートなど、幅広い内容になっています。行政職員が発行するには少々過激な内容かもしれませんが、「NGOに委託して、ある程度自由に運営させている」ことのプラス面が発揮されていると感じました。

■「民主的」経営が聞いて呆れる所長への独裁的権限付与
ところが「ワーカーズコープ」は、労組が結成された「なごやボランティア・NPOセンター」に対し8月18日、「非常事態」を宣言したのです。そして、今度は組合を率いてきた柴田委員長を「ワーカーズコープ」から不当解雇しようとしています。

「運営に必要な判断は、内部の話し合いを一切経ずに、理事会の指揮のもとで所長が行なえることを決定した」そうです。「ワーカーズコープ」は、「資本家の搾取がない労働」をめざし、労働者が共同出資して運営する協同組合、というのが建前です。しかし、一般企業でもある程度、株主や取締役会の制約を受けるのに、この「ワーカーズコープ」は、新しく所長になった松垣芳伸さんに独裁的権限を与えたのです。その上、所長が交代した時期も明確ではない状況で、現場は混乱しています。

■嘘の事実認定で、脅す現所長の「独裁」
松垣所長は、現在、暴走しています。彼は、柴田委員長が編集を一任されていた「交流感電池」に難癖をつけ、編集作業から柴田さんを外しました。「ワーカーズコープ」側は、柴田委員長が次のような行為を行なったと主張しています。

「名古屋市の発行物を外部に配布するには同市の担当局長の決裁が必要であるにもかかわらず、同市の承認も所長である当職の承認も得ないまま、独断で上記センターの情報誌『交流感電池7月刊』を市政記者クラブに配布した」。

しかし、これは明らかに事実に反します。そもそも、「なごやボランティア・NPOセンター」の情報誌の発行に「同市(名古屋市)の担当局長の決裁が必要である」という根拠は一体どこにあるのでしょうか?。

名古屋市と特定非営利活動法人「ワーカーズコープ」との間で結ばれた「なごやボランティアNPOセンターの管理運営に関する基本協定書」には、「各種申請様式、パンフレット等乙(「ワーカーズコープ」)が作成する印刷物及びホームページに関すること」について、ただ「事前に甲(名古屋市)と協議しなければならない」とあるだけです。7月号については、柴田委員長は印刷に先立ち、同市市民経済局地域振興部地域振興課のTさんにゲラをFAXし、「OKでーす」との返答を得ていたのです。「市と協議」と言っても市の業務を実際に担当している市の職員がOKといっているのですから、問題ない、というのが、公務員である私からみても常識です。

そもそも松垣さんは、7月号配布の時は所長ではありませんでした。前所長のBさんは、情報誌の発刊については、「交流感電池5月刊」発刊の際から一貫して柴田委員長に一任していた状態で、特に「所長の承認」という形式が求められることは、これまでありませんでした。7月号に関しても、Bさんから特に注意や命令はありませんでした。

柴田委員長は、職場のミーティングで「交流感電池」を「市政記者クラブにも置きに行こう」と、5月から一貫して提案しており、特に反対もなかったため、これを実行しただけなのです。従って、「交流感電池」7月号の印刷・発行・配布については、その後の8月23日付の「通告書」に至るまで、「ワーカーズコープ」内で何ら問題視されることはなかったのです。

「ワーカーズコープ」側は、明らかに誤った事実認定を前提に、「独裁権限」を与えられた所長名で「反省」文の提出を「命じる」通告書を、柴田委員長の自宅に内容証明で送付し、従わなければ「解雇及び除名」だと脅しています。しかし、柴田委員長としては、前提となる事実認定が誤っているのですから、反省のしようがありません。

■議論の時間を与えない短兵急な就業規則変更提案
しかも「ワーカーズコープ」からの除名(=解雇)は、「ワーカーズコープ」自身の就業規則でも「除名処分は、各職場、事業所で充分な議論及び大多数の同意を得た上で、定義第10条の第2項及び第3項の手続きを行なわなければならない」と規定されています。慎重の上にも慎重な運用が求められる最も重い処分です。現場の声を一切無視し、一所長の一存で勝手に決められる話ではありません。

さらに「ワーカーズコープ」側は25日午後、突如として就業規則の改定を通告し、意見のあるものは28日までに文書で出せ、と言いだしたそうです。

そもそも「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合」には、「労働組合等との交渉……に係る事情に照らして合理的なものであるとき」でなければ「労働契約の内容である労働条件」を、「当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」ことはできない(労働契約法第10条)のです。

ところが、「なごやボランティア・NPOセンター」に現存する労働組合である「名古屋イキナリ労組」には、これまでのところ、交渉の申し入れはありません。

さらに、セコイことに、「ワーカーズコープ(所長)」は就業規則改定の意向を表明した同じ25日、柴田委員長に対して、意見提出締切日の8月28日までの「自宅待機」命令を出したのです。就業規則の改定(または制定)にあたっては、民主的に選出された労働者代表の意見書の添付が不可欠です(労働基準法第90条)。「ワーカーズコープ」が就業規則の改定を行なうなら、当然、労働者代表の選出が行なわれなければなりません。28日までの自宅待機命令は、柴田委員長を労働者代表選挙からあらかじめ排除することを狙った不当労働行為ではないでしょうか?

大体、労働者側に3日間しか時間を与えない、というのがナンセンスです。労働条件を変更するには、それなりに時間をかけて合意形成を図るのが誠実な態度と言うものでしょう。まず、労働者内部で意見集約し、それをもとに当局と交渉し、さらにその結果を組合員に報告し、というサイクルを何回か経ないと、良い就業規則などできるわけがありません。

■管理職が組合員を取り囲み「誓約書」強要
脅されているのは委員長だけではありません。新所長の松垣さんは,ボランティア活動もNPOも素人です。話し合いのときの態度も「不遜」だと職員一同から不評を買っています。そのような中、出勤している職員が一人づつ呼び出されています。

そして、職員は東京の「ワーカーズコープ」の本部から来た何人もの「えらい人」に取り囲まれ、「松垣さんのいうことを聞きます」という、誓約書を書けと迫られ、書かないと「自宅待機」にさせられるという事態も起きています。労働者の味方であるはずの「ワーカーズコープ」は組織を挙げて、組合つぶしにかかっています。

■やる気なくさせ、「職員総入れ替え」が狙い?
当たり前の話ですが、「ワーカーズコープ」は、公正・民主的な労働者代表選挙で選出された労働者代表と充分な協議の上で就業規則の改定を行なうべきです。そして、柴田委員長を労働者代表選挙から排除する「自宅待機命令」を速やかに撤回すべきです。

また、「一人一人、職員を脅さないと所長と認めてもらえない」ような松垣所長こそ、更迭されるべきではないでしょうか?はっきりいって、このような方を所長にしておくこと自体が、意図的に職員のやる気をなくさせている、ということではないでしょうか?実際、ある組合員は「『ワーカーズコープ』は、(問題意識を持って働いている)今の職員のやる気をなくさせ、辞めてもらって、『市当局のいうことをおとなしく聞く人』に総入れ替えしたいのではないか」と語っていました。

■市の官僚主義と「民主的経営」の暴走を許すな
私は、「労働者協働という志があるメンバーが集まっているのだから、少々の乱暴は許されるだろう」という甘えを、この所長のルール破りから感じます。

もちろん、このような事態は、「ワーカーズコープ」を指定管理者にした市当局にも責任があります。「民間に運営させて、コストを安くしたい。一方で、行政にとって都合が悪いことは、やってもらいたくない」という市の官僚主義的対応に、仕事を失いたくない「ワーカーズコープ」が屈し、そのしわ寄せが労働者と利用者の市民を直撃しているように思えます。

柴田委員長に対して、これ以上、不当な処分が強行された場合は、遠くからではありますが、できる応援を全力で行ないたい、と思っています。

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