名ばかり『ワーカーズコープ』に気をつけて!

http://prudence.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-8cca.html

旅行書士雑記帳
2009年1月20日

『ワーカーズコープ』という言葉をご存じですか?

一般名詞としてのワーカーズコープは、WorkersCo-operativeつまり労働者協同組合と言われることがあります。これは、労働者が資金と労力を出し合って(主として公益性が高い)事業をおこない、労働者が自ら経営に参画し労働に従事し収益を分配しよう、というのが理想です。

字面からみる限りでは大変素晴らしいものに見えます。この考え方を取っていると標榜する事業体の中には、本当に素晴らしいものもあるでしょう。

しかし、残念ながらそうでない組織もあります。この事務所で昨年終結した労働訴訟のなかに、一般名詞としてのワーカーズコープの一つを相手とする ものがありました。事案の概要は、ワーカーズコープを自称するNPOが運営する事業所正社員のサービス残業に基づく未払い割増賃金の請求で、最終的に請求 額の約3分の2を得て和解となっています。そこでは普通の営利企業と同様に

  • 上司もいれば
  • 部下もおり
  • サービス残業もちゃんと存在します。

不幸中の幸いとして、そうした事業体にも労働基準法はいまのところ適用され、法律と裁判所に拠ってお客さまの権利を守ることはできるのです。

さて、僕があつかった事案はあくまでも関東の遠く離れた町のことだと思っていたのですが、昨年から気になるニュースが入っています。

名古屋市のある施設でこのNPOが施設管理者となり、そこを舞台に労働紛争が起きているようなのです。(それに関する、www.janjan.jpの記事

こちらの紛争の概要は不当解雇あり労働条件不利益変更あり、果ては本部から職員を送り込んで多数派を形成して本部側有利な就業規則の変更を企んだり!と、とても労働者協 同組合を標榜する者がやることではありません。これに対抗して労働組合ができたことには拍手喝采しますが、経営側に対して労働組合を作って戦わなければな らないこと自体、労働者の組織であるはずのワーカーズコープ内にしっかりと経営層が存在することの矛盾を描き出してしまっています。

そんなことってあるのだろうか?労働者が作ったはずのワーカーズコープでサービス残業や不当解雇なんてあるのか?と純粋なひとは思ってしまうのか もしれません。僕の経験を言えば、証人尋問における経営側職制の証言の内容からして上記の記事はまず真実と思っていいだろうと考えます。ワーカーズコープ の労働紛争における最大の特徴は、労働法秩序より自分の組織の主張や見解を優先させて恥じない(利益ではなくて理想を追っている、という気負いが自らの過 ちを認めることを妨げていると推定します)ことで、裁判ひとつとっても請求額の割に一般企業より長期化してしまうのです。上記各記事を見る限り労組を作っ て戦っても、残念ながら客観的な情勢の改善にはまだ至っていない、というより経営側は労働組合とその関係者をなんとか排除するため必死で、紛争は確実に長 期化しつつある、というのが名古屋市の施設の状況と見受けられます。

たぶん労働側が法的措置をとるか、さもなくば施設を保有する名古屋市が積極的介入(または、指定管理者すげ替え)を図らないと問題は解決へ向かわ ないだろう、と、この団体と戦った者の一人として見ています。僕が見た関東でも、そして名古屋でも、その他に九州でもこの団体はなんらか構成員と紛争を起 こしているらしく、『小さな査問の話』というウェブサイトが数年前から健在で、僕も裁判書類作成の際にはこの団体の気風を知るために参考にしていました。

理想と実情との間に恐ろしい乖離があり、なまじ労働者のための組織を標榜しているがゆえに労働紛争が必然的に泥沼化する、というのが一般名詞とし てのワーカーズコープの問題点です。事業所の名称にかかわらず、もしこうした求人=労働者が作った労働者のための事業所に見える求人の募集に応募しようと する際には、次のことに注意する必要があります。

1.出資を強要されないか。

考えてみましょう。理想がなんであれ経営面である程度安定した事業を持っており収支が健全な事業体であれば、構成員からお金を巻き上げる活動に邁 進する必要はありません。逆に経営面での安定を欠く事業体であれば、ぽっと入社したばかりの人間にいきなり出資額相当のリスクを負わせようとする勧誘自体 が不適切かつ危険です。いずれにせよ、就労を開始したばかりなのにいくらか金をだせ、と言ってくる発想は労働者を搾取の対象として見ていないと出てこないものだと考えるべきです。関わり合いになってはいけません。納得できない出資要請は断りましょう。

2.経営にタッチできないのに経営者呼ばわりされていないか。

みんなが経営しみんなが労働するんだ、というのが一般名詞としてのワーカーズコープの理想なんですが、オイオイちょっと待て、と言わなければいけません。

もし労働者が経営者にあたるというならば、働いたぶんだけの分配を得る権利は誰かがそれを拒否できようものではないはずです。少なくとも、働いた ぶんだけの分配が実現できないことは経営課題として協議されねばなりません。それを『拒否できる』ひとがもしだれかいるとしたら、そこには何らか上下関係が存在していると考えねばなりません。

まして一日に十何時間働いても労働者は経営者を兼ねているから残業手当無し、などというのは単にただ働きしているだけであって、そうした状態が当 然でないと事業が成り立たないというならそこにいるのは労働者としての資質はともかく経営者としてはかなり無能な人間の集団だ、ということになります。転職を視野に、さしあたり残業手当請求への証拠を確保すべきです。

3.社会保険制度への加入を拒否されていないか。

これは単に中小零細企業共通の問題なんですが、一般名詞としてのワーカーズコープの場合には『構成員はみな経営者で、事業を共同で運営しているから使用従属関係・雇用契約関係はなく、したがって労働者のための労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金の適用はない』などという犯罪的発言が上級職制から飛び出してくることもありそうです。

これとは逆に、『出資金を出さないから社会保険には加入させない』ということも考えられます。

なんにしろ、そこでの労働があなたの現在と未来の経済的安定を捨ててまでなすべきものでないならば、さっさとそこから離れたほうがいいと思います。


名ばかり管理職という言葉があります。肩書きだけ管理職にしておいて実際にはそうした実情がなく、労働基準法第41条の例外規定には該当するから時間外労働割増賃金を支給しないとして酷使される立場を指す言葉です。

さしずめ上記のような、上級職制横暴現場労働者圧迫型の自称ワーカーズコープは、『名ばかりワーカーズコープ』とでもいうべきものです。派遣切り や名ばかり管理職が、移り気なマスコミに時折の脚光を浴びる陰で少しずつ、名ばかりワーカーズコープ問題は拡大していく可能性が高いと僕は憂慮していま す。もちろん、こうした事業体でなんらかお困りの方の相談は積極的に受託します。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中